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内観ひろば

【開催報告】経営・組織づくり・ウェルビーイングを育む「内観」実践シンポジウム

2026.09.23

経営・組織づくり・ウェルビーイングを育む ― 内観に取り組んだ実践者たちのリアルな対話 ―

2026年8月29日(土)、愛知県海部郡蟹江町の株式会社丸昇 本社4階カフェテリアにて、「内観ひろば ご支援の感謝還元シンポジウム」を開催いたしました。会場・オンラインあわせて多くの皆様にご参加いただき、熱気あふれるひとときとなりました。誠にありがとうございました。

本シンポジウムは、昨年末から今年1月にかけて実施したクラウドファンディングへのご支援に感謝を込めて企画したものです。88名の皆様から403万円という、私たちにとって思いもよらない志が集まりました。集まったのは資金だけではありません。応援コメントを通じて、内観に携わる方・内観を応援してくださる方々の「気持ち」が可視化されたことこそ、大きな成果だったと感じています。この場を借りて、あらためて厚く御礼申し上げます。

テーマは「経営・組織づくり・ウェルビーイングを育む」。内観を実際に組織へ取り入れ、人生や経営に活かしてきた3名の実践者による、飾らない本音の対話をお届けしました。

本レポートを読み進めていただくにあたり、一点だけ添えさせてください。登壇者の皆様は、いずれも確かな事業構想力や現場での努力によって会社を築いてこられた実践者です。内観は、その経営そのものを代替するものでも、業績を約束する手法でもありません。むしろ、日々の経営に真剣に向き合う一人ひとりを、内側から支える「土台」としてはたらくもの――それが、3名のお話に共通して流れていた実感でした。「内観をすれば会社がうまくいく」という単純な話ではなく、「自分と向き合う習慣が、人と組織の関係を少しずつ変えていく」。そうした視点で読んでいただければ幸いです。

開会のごあいさつ ― 日本内観研修所協会会長 清水康弘

開会にあたり、日本内観研修所協会・清水康弘会長よりごあいさつをいただきました。協会は、吉本伊信先生を慕う有志が年に一度集った内観講話会を源とし、三木善彦先生の呼びかけによって「内観研修所協会」として歩みを重ねてきた実践者の集まりです。近年は次世代へと門戸を開き、内観を世に広めていく動きを進めています。その大きな一歩を、長島美稚子さん・橋本あきこさんのご尽力によるクラウドファンディング、そして本シンポジウムが担ってくれました。「支援する側もされる側も、気持ちが可視化されると連帯感が高まる。こうした会を重ね、内観を世に定着させていきましょう」との言葉で会場を温めてくださいました。

内観ひろば・内観とは ― スタッフ 香具より

続いて内観ひろばスタッフの香具より、ポータルサイト「内観ひろば」の役割と、そもそも内観とは何かをご紹介しました。内観とは、自分の内側を見つめて自分を知る方法です。吉本伊信氏はその目的を「どんな逆境にあっても感謝報恩の気持ちで日暮らしできる心境への大転換」と表現しました。方法はとてもシンプルで、幼い頃からお世話になった方に対し「してもらったこと」「して返したこと」「迷惑をかけたこと」の3項目を振り返ります。相手を分析するのではなく、その時の自分を見つめていくのがポイントです。内観ひろばは、そうした内観と人をつなぐ入り口として、研修所の案内やイベント情報を発信しています。

第1部:経営者による実践報告

株式会社丸昇 代表取締役社長 安藤明弘様

Tシャツなどのプリント加工製造を手がける丸昇の安藤社長。初めて集中内観に臨んだのは2019年、会社が急拡大するさなかでした。数字は好調でも社内では部署間の摩擦が絶えず、疲弊感が漂っていた頃、服部会長からの「自分のこと、分かっていますか」という一言が転機に。「自分の気持ちが分からない人に、人の気持ちは分からない」と気づき、富山の北陸内観研修所へ向かいました。両親やリーダーたちへの感謝と反省がこみ上げ、研修所を出た瞬間には里山の緑や空の青さがビビッドに見えたといいます。

その感動を、1年かけて自らの変化を見てもらいながら社内へ広げていきました。仲の悪かった課長2名が内観を経て深く理解し合い、いまは部長として会社を牽引しています。研修後の「内観報告会」による絆づくり、月1回のフォローアップ面談、そして「何かあったら内観」という共通言語の醸成。こうした地道な積み重ねが、部署間の摩擦を和らげ、組織の風通しを良くしてきました。安藤社長ご自身も「内観のおかげ、と言うのは少し大げさかもしれない」と率直に留保を添えられます。生産性や品質へのこだわり、新規事業への挑戦といった経営努力があってこその歩みであり、内観はその努力を続ける人と組織を内側から支えてきた――そんな関係性が伝わるお話でした。「幸せは成長から得られるもの。課題に向き合う一人ひとりの後押しをしたい」との言葉が印象に残ります。

株式会社クイック・ガーデニング 代表取締役社長 渡辺則夫様

庭木1本からの剪定サービスを全国展開する渡辺社長。創業の原点には、出資者から「うまくいかなくても内観だけは続けなさい」と背中を押された経験があります。社員・カットデザイナー(植木職人)が入社の過程で集中内観を体験する体制を築いてこられました。

この日、渡辺社長が語ってくださったのは、内観への賛辞ではなく、むしろ痛みを伴う反省でした。ひとつは「経営と内観の距離感」。かつては内観を商売の道具として使おうとしすぎ、そのしっぺ返しを受けた――「内観は大事だが、内観だけに頼る経営は難しい」と気づき、1年をかけて企業理念を練り上げた歩みを共有してくださいました。内観を効果目的の手段にしようとしたとき、かえって本質を見失う。この率直な戒めは、内観を組織に取り入れようとするすべての人にとって、示唆に富むものでした。もうひとつは「退職者が最後に何を言って辞めていくか」。退職時の聞き取りをふり返ると、会社への評価はさまざまでも、内観という体験そのものを振り返る言葉には、静かな肯定がにじんでいたといいます。

中日本興業株式会社 代表取締役会長 服部徹様

18歳で父を亡くして以来、「生きるとは何か」を問い続けてきた服部会長。内観の存在を知ってから実際に足を運ぶまで7年を要し、初めての内観では3日目に全身の痛みと発熱に襲われながらも、祖父の思いが胸に流れ込む体験に号泣したといいます。研修後は道端の草にも信号にも感動し涙する「心の静寂」を知りました。

会社への導入には3度の内観と葛藤を重ねられました。「人間力を上げる研修」への戸惑いを抱えながらも、「一度きっかけがあれば、その人の人生のどこかで必ず役に立つ」と信じて踏み出したといいます。月1回の「生き方人間塾」を8年続け、社員が内省し、語り合う場を育ててきました。今年4月に社長から会長へ。「この生き方は経営につながる」という冊子を手に、「人間経営塾」として学びを継承しています。「会社は人の集まり。一人ひとりが自分という軸を持てば、コマが芯で回るように、自ずと調和が生まれる」――経営を、数字の前にまず人の集まりとして捉えるまなざしが、深く印象に残りました。

第2部:クロストーク「内観と経営の本音トーク」

 

第2部は、内観ひろば責任者で北陸内観研修所にて面接を担う長島美稚子さんの進行のもと、3名によるクロストークを行いました。「内観の深さの違いはどこにあるか」「なぜ経営者は何度も内観するのか」といったテーマで、体験に根ざした本音が飛び交いました。数字や資料はもちろん見据えたうえで、最後は直感で判断し後からデータで裏づけるという服部会長。体験発表を聞くたびに互いが人格的に成長していく姿があると語る安藤社長。壁にぶつかったとき「内観に行くといい」というワードを分かち合い、共に向き合っていく――内観との付き合い方は三者三様で、それぞれの経営と暮らしの中に、無理なく根づいている様子がうかがえました。

質疑応答・登壇者からのメッセージ

質疑応答の後、登壇者のお三方から一言ずつ。「感謝の言葉しかありません」(服部会長)、「内観を知ってもらうことが何より大事」(渡辺社長)、「本当に楽しくハッピーな時間だった。次はぜひ従業員の体験談も聞いてほしい」(安藤社長)。会の締めくくりにふさわしい、温かな言葉が続きました。

結びに

「あなたにとって、内観とは?」――忙しい日々の中で、なぜ経営者は内観を続けるのか。その問いに、3名の実践者が現場の葛藤も含めて誠実に応えてくださった、貴重で有意義な時間でした。

3名のお話をあらためてふり返ると、内観は魔法の経営術ではありませんでした。事業を支えるのは、あくまで一つひとつの経営判断であり、現場の努力です。そのうえで内観は、判断する人・努力する人自身のあり方を整え、人と人との関係を少しずつ変えていく。派手さはなくとも、経営の土台を静かに支える営みとして、三者三様に息づいていました。同時に渡辺社長が語ってくださったように、内観を効果目的の手段にしようとすると、かえってその本質から遠ざかってしまう。内観との健やかな距離感もまた、この日の大切な学びでした。

なお内観は、深く自分と向き合うぶん、人によって感じ方や向き・不向きがあります。内観ひろばでは、はじめての方が安心して一歩を踏み出せるよう、研修所や専門家とのつながりも含めてご案内しています。ご関心をお持ちの方は、どうぞお気軽に内観ひろばをのぞいてみてください。

会場提供から準備・配信までご尽力くださった株式会社丸昇の皆様、登壇者の皆様、長島さん、そしてご参加・ご視聴くださったすべての皆様に、心より御礼申し上げます。この輪が、内観を必要としている方へ少しずつ届いていくことを願っています。

 

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